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IoT機器のセキュリティを強化する超低消費電力マイコンSTM32L5を発表

・リソースに制約のあるコネクテッド機器において、ハードウェア・ベースのセキュリティ保護を可能にするArm® TrustZone®を実装 ・ST独自の超低消費電力技術を採用し、消費電力重視のシステムに最適 ・セキュア・ブート、セキュリティ向けのハードウェア分離、ハードウェア暗号化アクセラレータの搭載により、保護機能を強化し、柔軟性を向上

2018年10月19日

多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーの
STマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、消費電力を重視するコネクテッド機器に、洗練されたセキュリティ保護を提供する、Arm® Cortex®-M33プロセッサ搭載のSTM32L5マイクロコントローラ(マイコン)を発表しました。

STM32L5マイコンは、ハードウェア・ベースのセキュリティ技術であるArm社のTrustZone®を実装し、小型機器向けにセキュリティが強化されたCortex-M33を搭載しています。同製品は、メモリ・マップ上のセキュリティ領域でソフトウェアを保護することができます。また、セキュア・ブート、キー・ストレージ、ハードウェア暗号化アクセラレータなどの機能が追加されています。そのほか、豊富な機能と高い性能を提供するとともに、コイン電池やエナジー・ハーべスト(環境発電)で長時間駆動することができる超低消費電力を特徴としています。シャットダウン・モードでの消費電力を僅か33nAに抑え、EEMBC(1) のULPBenchで402 ULPMark-CPを達成した同製品には、電圧スケーリング、リアルタイム・アクセラレーション、パワー・ゲーティング、豊富な低消費電力動作モードなど、STM32Lシリーズで培われたSTの高度な低消費電力技術が活用されています。

STのマイクロコントローラ事業部ジェネラル・マネージャであるRicardo De Sa Earpは、次のようにコメントしています。「TrustZoneと専用の保護機能を搭載したSTM32L5シリーズは、小型IoT機器のセキュリティ保護を大幅に強化します。また、ST独自の低消費電力技術、豊富なコネクティビティおよびスマートなデジタル / アナログ・ペリフェラルを搭載しており、最先端のネットワーク接続型アプリケーションのホスト・マイコンに最適です。」

STM32L5シリーズには、広範なデジタル / アナログ・ペリフェラルのほか、豊富な通信インタフェース(CAN FD(2)、USB Type-C™、USB Power Deliveryなど)が搭載されており、産業用センサ / コントローラ、ホーム・オートメーション機器、スマート・メータ、フィットネス機器、スマート・ウォッチなど、多様な製品のプラットフォームに最適です。

STM32L5シリーズは現在サンプル出荷中で、2019年第2四半期に量産が開始される予定です。

STは、Arm TechCon(10月16日~18日、カリフォルニア州サンノゼ)において、セキュリティ・ソフトウェアを専門とするProve & Run社と協力して開発した、STM32L5シリーズのデモを実施しました。

Arm社のバイスプレジデント 兼 Embedded & Automotive Line of Businessジェネラル・マネージャであるJohn Ronco氏は、次のようにコメントしています。「IoT機器は、高性能・高機能化が進んでおり、強力なセキュリティ保護機能を内蔵することがこれまで以上に求められています。ArmのPlatform Security Architecture(PSA)は、セキュリティ保護機能を実装するための共通フレームワークとして、IoT機器の心臓部のセキュリティ強化を目指します。STM32L5シリーズにより、開発者は、PSAフレームワーク上で、Cortex-M33プロセッサ、TrustZone技術およびSTの優れたセキュリティ機能を持つ信頼性の高い機器を簡単に開発することができます。」

ProvenCore-MセキュアRTOSを提供するProve & Run社の創業者で、社長のDominique Bolignano氏は、次のようにコメントしています。「STと協力してデモの開発を行ってきた当社は、最新のサイバー攻撃からコネクテッド機器を保護するために、STM32L5のハードウェア機能を活用してセキュリティを強化する方法を明確に理解しています。」

技術情報
STM32L5シリーズに搭載されたTrustZone IPは、トラステッド・コンピューティングの原理に基づき、ネットワーク接続機器の認証を実行します。元来、デスクトップPC、モバイル、通信インフラなどに向けて構築されたこのハードウェア・ベースのアプローチは、機器やソフトウェアへの不正アクセスを防止するとともに、機密性の高いコードや、暗号化、キー・ストレージなどのセキュリティ保護機能を実行するために、保護された命令実行環境を生成します。TrustZone対応のCortex-M33プロセッサを搭載するSTM32L5シリーズは、このハイエンドの保護機能を、リソースに制約のある超小型IoT機器をはじめ、さまざまな組込みシステムに提供します。

STM32L5シリーズは、各I/O、ペリフェラル、FlashメモリやSRAMの領域を、TrustZoneによる保護環境の内部または外部に柔軟に設定できるため、機密性の高い処理を完全に分離し、セキュリティを最大限に高めることができます。また、セキュア・ブートをサポートできるよう設計されたTrustZone、内蔵のSRAM / Flashメモリの読出し・書込み保護機能、外部コード / データ保護を可能にする各種暗号化アクセラレータ(AES 128/256bitキーによるハードウェア・アクセラレータ、公開鍵アクセラレータ(PKA)、On-The-FlyによるAES-128復号化機能(OTFDEC)など)を搭載しています。さらに、アクティブ・タンパ検出およびセキュアなファームウェア・アップデートにも対応しています。

STM32L5シリーズには、柔軟性の高い省電力動作モードと超低消費電力技術に加え、高効率の降圧スイッチング・レギュレータも搭載されています。そのため、VDD電圧が十分確保されている場合は、低消費電力特性を向上でき、動的に供給電力を変化させることが可能です。

STM32L5シリーズは、DSP命令セットと浮動小数点演算を含む高度なプロセッサ性能とARTアクセラレータ™を活用することで、110MHz動作時に最大165 DMIPS/427 CoreMark(3) ™を達成しています。STのARTアクセラレータには、外部メモリでのソフトウェア実行時に効率を飛躍的に向上させる新たな機能が追加されており、8KBの命令キャッシュが内部Flashメモリと外部メモリの両方をサポートできるようになっています。

512KBのデュアル・バンクのFlashメモリは、書込み・読込みの同時処理により機器管理を簡略化するとともに、診断機能のあるエラー検出訂正(ECC)をサポートしており、高い安全性を実現しています。また、256KBの内蔵SRAMに加え、高速インタフェース(Single、Dual、QuadまたはOctal SPI、Hyperbus)を持った外付けメモリ / SRAM、およびパラレル・インタフェースを持ったSRAM、PSRAM、NOR、NANDまたはFRAMにも対応しています。

また、STM32L5シリーズには、新しいデジタル・ペリフェラルも導入されています。専用電源を備えたUSB Full Speedは、システムが1.8Vで駆動しているときでもUSB通信を維持することができます。また、USB Type-C Rev. 1.2規格とUSB Power Delivery Rev. 3.0規格に準拠するUCPDコントローラも搭載されています。

スマートなアナログ・ペリフェラルには、A/Dコンバータ、パワー・ゲーティングされたD/Aコンバータ、超低消費電力コンパレータ、外部または内部フォロア回路とプログラマブル・ゲイン・アンプ機能を備えたオペアンプなどが含まれています。

STM32L5シリーズには、コンスーマ機器を含む一般商業用途向けの標準温度対応品と、過酷な環境下での使用に対応する高温対応品(-40°C~125°C)が用意されています。

詳細については、www.stmcu.jp/stm32/stm32l5/をご覧ください。

STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標および / または未登録商標です。STM32は米国特許商標庁に登録されています。

(1)EEMBC:エンベデッド・マイクロコントローラ・ベンチマーク・コンソーシアム(Embedded Microcontroller Benchmarking Consortium)
(2)CAN FD:可変データ・レートに対応するCANで、帯域幅とデータ容量を最適化できる優れた柔軟性を備えています。
(3)CoreMark:業界で認められたEEMBCのフレームワークで、マイコンやCPUの性能比較に使用されます。