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次世代デジタル・パワー・アプリケーションの性能・効率・セキュリティを向上させるSTM32G4マイコンを発表

・演算の高速化と省電力化を可能にする新しい数値演算アクセラレータ ・より多くのセンサとユーザ機能を実現する先進的なアナログ・ペリフェラル ・サイバー・セキュリティを向上させる強力な保護機能

2019年5月28日

最新のスマートな電子機器には、センサを利用した機能が多く搭載されるとともに、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの省電力化に向けた高効率電源技術が採用されています。多種多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(NYSE:STM、以下ST)は、このような電子機器の制御に最適な新しい32bitマイクロコントローラ(マイコン)を発表しました。

先進的なデジタル・パワー・アプリケーション、コンスーマ機器および産業機器を対象とするSTM32G4マイコン*は、新しいハードウェア数値演算アクセラレータを2種類搭載し、さまざまな機能にCORDIC(1) 関数とフィルタリング関数を使用してアプリケーションの処理を高速化することで、高性能化と高効率化を実現します。生活家電やエアコンの省電力モータ制御に使用される三角関数などの計算の高速化と、信号処理やデジタル電源制御におけるフィルタリングに特化したこのアクセラレータは、汎用のメインCPUより高速かつ高効率に演算を実行します。これにより、CPUの負荷が軽減されるため、センサ・データの受信とユーザ機能の制御をより多く処理できるようになります。

このほかの新機能として、CPUのさらなる負荷軽減と開発の簡略化のために各種機能を内蔵した高分解能の電力変換タイマが搭載されています。また、高性能のアナログ・ペリフェラルおよびコンバータや、外部イベントへの応答時間を大きく短縮する超高速通信機能も搭載しているほか、Power Deliveryに対応した最新のUSB-Cインタフェースを内蔵しているため、最大100Wの高速充電 / 給電アプリケーションにも貢献します。

STのマイクロコントローラ事業部ジェネラル・マネージャであるRicardo De Sa Earpは、次のようにコメントしています。「当社のSTM32G4シリーズに搭載された革新的な技術を活用することにより、低消費電力かつ高性能な最先端のコンスーマ機器ならびに産業機器を実現することができます。同シリーズは、高性能で豊富なペリフェラルおよびインタフェースと、業界標準のArm®プロセッサを集積するSTM32F3シリーズの優れたコンセプトをベースに、アプリケーションのさらなる高機能化と設計の簡略化に加え、低消費電力化ならびに高性能化を実現します。」

STM32G4マイコンは、演算の高速化、精度の向上および集積機能の増加により、スマート・ライフ、スマート・ファクトリ、およびスマート・エネルギーに向けた幅広い製品の多機能化と高エネルギー効率化に貢献します。その対象は、eモビリティ(電気自転車など)、デジタル電源、先進的モータ制御、照明、ビル自動化システムなど多岐にわたります。

さらに、秘匿用ストレージとセキュアかつリアルタイムのファームウェア更新用のセキュリティ保護された拡張可能メモリ領域、アタック・サーフェス(攻撃可能な領域)を削減するためのプログラミング後のデバッグ・アクセス・ポート遮断、最新のAES-256暗号化エンジン、機器の固体識別用ユニークID、真乱数発生器(TRNG)などの機能を搭載しており、サイバー・セキュリティに関する最新の課題に対処することができます。

STM32G4シリーズは、32ピン・パッケージで提供されるアクセス・ラインから、高速入出力ピンを最大107本備えたパフォーマンス・ラインおよび高分解能タイマ・ラインまで、152品種のラインアップが予定されており、この内100品種以上が現在入手可能です。STM32G431K6U6(内蔵Flashメモリ:32KB、パッケージ : 32ピンQFN)の単価は、大量購入時に約1.68ドルです。

詳細については、ウェブサイトをご覧ください。

技術情報

マイコンのアーキテクチャ
STM32G4シリーズは、ART アクセラレータ™やCCM-SRAMルーチン・ブースタなど、性能と効率を向上させるST独自の革新的な技術を採用しています。これらの技術は、それぞれ動的および静的なメモリ・キャッシュの性能を向上させ、効率的なパワー・バジェットのままでアプリケーション全体のリアルタイム性能を向上させます。

STの新しいハードウェア数値演算アクセラレータは、Filter-Math Accelerator(FMAC)と専用CORDICエンジンを導入しており、さらなる高性能化を可能にします。これらの新しいペリフェラルにより、モータ制御で使用される三角関数による回転制御とベクトル制御のほか、一般的な関数(対数関数、双曲線関数、指数関数)、デジタル電源で使用されるIIR/FIRフィルタによる信号処理や3極3ゼロ制御、ベクトル関数(畳み込み関数、相関関数など)の演算で、より高速に結果を得ることができます。STM32G4シリーズは、高速のArm Cortex®-M4プロセッサ(170MHz)と、浮動小数点ユニットおよびDSP拡張機能を搭載しており、213DMIPSと550 CoreMark®(2) というベンチマーク評価を獲得しています。

また、先端プロセス技術およびアーキテクチャ機能から先進的なペリフェラルによるスリープ / ウェイクアップ制御まで、革新的な省電力技術を幅広く採用しています。主な機能は次のとおりです。

• 最小184psの分解能を持つ12個の独立チャネルを備えた高分解能タイマ(温度ドリフトおよび電圧ドリフト自己補正機能付き)
• 先進的なアナログ・ペリフェラル(最大25個)
  ◦ ハードウェア・オーバー・サンプリングにより分解能を16bitまで向上可能な12bit A/Dコンバータ(最大4Msps):
   最大5ユニット
  ◦ 1%精度の内蔵プログラマブル・ゲイン付き高速・高利得帯域幅オペアンプ:最大6ch
  ◦ 12bit D/Aコンバータ(最大15Msps):最大7ユニット
  ◦ 低伝番遅延(16.7ns)のアナログ・コンパレータ:最大7ch
• 標準的CANと比較して最大8倍のペイロード・ビット・レートを持つ産業機器向け通信のCAN-FD対応
• バッテリ駆動時間の長期化を実現する165µA/MHz未満の動作モード
• 大容量内蔵RAM(最大128KB、パリティ・ビット付き)
• 誤り訂正符号(ECC)付きFlashメモリ(最大512KB)
• DMAと外部割り込みの柔軟性を強化
• デジタルまたはアナログ向けに最適化された製品ラインアップ(アクセス・ライン / パフォーマンス・ライン / 高分解能タイマ・ライン)

既存のSTM32F3シリーズを補完する新しいSTM32G4シリーズは、STM32F3シリーズの約3倍の性能を実現しています。また、高温グレード(最大125°Cの周辺温度対応)の製品もラインアップされており、リアルタイムのファームウェア更新用デュアルバンクFlashメモリを内蔵しているほか、新しいパッケージ・オプション(LQFP80、LQFP128など)も用意されています。さらに、外来ノイズに対する堅牢性に優れており、IEC 61000-4-4レベル5(機器の4kV超の耐圧性能に相当)のファスト・トランジェント・バースト(FTB)への耐性を備えています。

充実した開発エコシステム
STは、STM32G4マイコンを使用したシステム開発をサポートするため、STM32開発エコシステムを拡充しています。低コストのSTM32 Nucleoボード(NUCLEO-G474RENUCLEO-G431RB)、フル機能搭載の評価ボード(STM32G474E-EVAL、暗号化機能付きSTM32G484E-EVAL)、およびSTM32CubeG4ソフトウェア・パックが提供されています。また、専用のモータ制御用Nucleoパック(P-NUCLEO-IHM03)やソフトウェア開発キット(X-CUBE-MCSDK v5.4)のほか、モータ制御用アプリケーションの開発エコシステムに簡単にアクセスして必要なリソースを検索・選定できるオンライン・ツールST-MC-SUITEも用意されています。

STM32G4シリーズのデジタル電源機能およびモータ制御機能を活用できる専用開発キットは、2019年第3四半期にリリースされる予定です。

また、STM32G4マイコンに関する ブログ記事 もご覧いただけます。

* STM32は、STMicroelectronics International NVもしくはEUおよび / またはその他の地域における関連会社の登録商標および / または未登録商標です。STM32は米国特許商標庁に登録されています。
(1)CORDIC – Coordinate Rotation Digital Computer:基本的な関数を高精度で処理するための高効率演算アルゴリズム
(2)CoreMark:組込みCPUコアの性能比較に使用されるEEMBCによる業界標準のベンチマーク